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香音旅行記 長崎編

温かい土地の神社ではご神木にクスノキが多く見られます。

生命力が強く、大きく広く繁る憩いの木、トトロの木です。

 

クスノキを蒸留すると真っ白な結晶ができます。

これが樟脳と呼ばれます。

樟脳はカンフル剤という言葉通り、全身の刺激剤、鎮痛剤、抗炎症剤として優れた医薬品であり、防虫剤です。楠の精油もカンファーが多く、私もよく使います。

 

出島からオランダ船が運んだ日本からの主要輸出品目にも樟脳がありました。

長崎に原爆が落ち、爆風と摂氏4000℃に達した熱線と放射能で街は一瞬で焼け野原となりましたが、爆心地から800mの距離にありながら奇跡的に残ったクスノキが人々の希望となりました。

 

ムロに飛び込んだがれきを丁寧に取り除き、治療が施され、見事に今でも命を繋いでいます。

 

半分残った一本柱の鳥居と被爆クスノキを奉るのが山王神社です。静かで、明るい場所でした。

海に眠るダイアモンドでおなじみの端島は、島全体が家族のような豊かな街でしたが、海の潮も風も強く、がれきで埋め立てた島であったため植生が寂しかったようです。

 

当時の住民への聞き取りで「楽しかったこと」の中に「屋上農園」がありました。

 

最後の写真は屋上農園の植物の生き残りでしょうか、廃墟で風雨を避けて繁った緑は生き生きとしていて印象的でした。