コラム植物時間
2022年に展開したオンライン講座「植物時間」より
クロモジ第1回 春を告げる花
黒文字 クスノキ科LLindera umbellata
まだ見通しも良く、さみしさも感じる早春の山に、学名にumbrellaとあるように、傘をさしたようなクロモジの花が咲きます。葉がつく前に花が咲きます。
木漏れ日が射す明るめの林にポツンポツンと生える、細い木で、背もそれほど高くならず、4mくらいまでで、湿り気がある土地を好みます。
枝や葉が香水のように華やかな香りを放ちますが、歩いていて振り返るという香りではなく、見つけて、葉を折って、枝を折って、初めて香りが立ちます。
皇室の祭事でもクロモジの垣根がしつらえられ、熱湯をかけて、その香りの中で厳かに儀式が執り行われる伝統があるとか。
茶道に使われてきた歴史も長く、京都の待庵で千利休が庭から枝を折り楊枝に削り、和菓子に添えて客人をもてなしたとか。
安土桃山時代に起源を遡る養命酒には烏樟という生薬の名で配合されています。
明治の頃には伊豆の東、城ヶ崎のあたりはクロモジ精油が盛んに蒸留されていた歴史がありました。日本では先駆的な蒸留の試みでした。
高級石けんの貴重な香料でしたが、合成香料の登場と共に伊豆のクロモジ文化は途絶えました。
その継続を試みる花吹雪という一軒の旅館があります。宿と食事の提供に終わらず、伊豆の伝統と文化と自然を一体で感じる観光でありたいというご主人の思いが込めらています。
クロモジの垣根で囲まれた露天風呂、クロモジのアメニティ、自然と食と香りが迎えてくれます。
そして日本の香りが脚光を浴び始めた今、日本の各地で地域活性に、森の健康のための間伐にクロモジプロジェクトが進められています。
今後各地域の黒文字を訪ねてみたいと思います。
YUICA日本精油の講座でもクロモジは大切な存在。植生や歴史を学び、クロモジの華やかな香りの元であるリナロールを学び、香水、美容液、クロモジウォーターのローション作りなど存分にクロモジを楽しみます。